飛返計時のパイオニア、その名はロンジンなり

フライトウォッチの世界、特に「フライバック(飛返)クロノグラフ」という分野に足を踏み入れると、避けて通れないブランドがロンジン(Longines)です。
先日、ロンジンは「先行者(Spirit)」シリーズの新作、「パイロット フライバック クロノグラフ(飛返計時腕表)」を発表しました。この新作を見て、私は思わず「これはすごい」と声を上げてしまいました。
なぜなら、この時計は単なるモデルチェンジではなく、「時計愛好家からの要望」に真正面から応えた、いわば「理想形」の時計だからです。
今回は、この2025年最新作の「先行者 フライバック」がなぜ話題なのか、そして浪琴がなぜ「フライバックの先駆者」なのかを、詳しく紐解いていきましょう。
1. 100年の歴史が証明する「フライバックの正統」
まず、ロンジンというブランドと航空の関係性を押さえておきましょう。
浪琴は1910年代から航空用時計の開発を始め、多くの偉大な探険家たち(例えば南極点飛行のリチャード・バイアード提督など)に信頼されてきました2。
特に注目すべきは1935年。浪琴はこの年にフライバック機能の特許を取得し、翌1936年には伝説の「13ZN」機芯を搭載したフライバッククロノグラフを商業化しました2。
フライバック機能って何?
普通のクロノグラフ(計時腕表)では、「計時開始」→「停止」→「リセット(ゼロ帰零)」と、3回の操作が必要です。
一方、フライバックは「停止・リセット・再開」を4時位置のボタンを1回押すだけで一気に処理。パイロットが連続して時間を計測する際に非常に便利な、プロ向けの高機能です2。
長い間、この「フライバック」という複雑機能は、高級時計の世界では宝珀やパテック・フィリップといったハイエンドブランドにしか与えられない「特権」でした。そこに、浪琴が再び参入したのです。
2. 2025年新作「先行者 フライバック」の進化
2023年に発表された旧モデル(自動巻き仕様)も好評でしたが、今回登場した2025年モデルは、まさに「完璧への一歩」を踏み出しています。
旧モデルを愛用していた方からよく聞かれた「厚すぎる」という声に応える形で、新作は大きく仕様が変更されました5。
主な変更点
項目 旧モデル (2023) 新モデル (2025) 備考
ケース径 42mm 39.5mm 39mm台に縮小され、よりクラシックなサイズ感
ケース厚 17mm 13.4mm 約3.6mmの薄型化!着け心地が大幅改善
駆動方式 自動巻き (L791) 手巻き (L792) 手巻き機芯により、厚みを大幅削減
文字盤 太陽放射線紋 マットブラック クラシックな「埋め込み式」ディスクに
ベゼル 60分刻み 15/30/45分刻み レトロな雰囲気に
3. 達人のためのディテール:手巻きという選択
新作最大の特徴は、手巻き機芯「L792」を採用した点です14。
なぜ手巻き?
フライバック機構は構造上、通常のクロノグラフよりも部品点数が多く、どうしても厚くなりがちです。自動巻きの「ローター(振り子)」を取り外した手巻き仕様にすることで、ケース厚を13.4mmまで極限まで削り落とすことに成功。手首へのフィット感が格段に向上しています。
見える機械美学
裏蓋はサファイアクリスタルで、中にあるL792機芯を公開。柱状輪(カラムホイール)が青く輝き、心形カムが複雑な動きを見せます。シリコン製の遊丝を採用しているため、耐磁性能も高く、COSC天文台認証を取得しています14。
文字盤の洗練
旧モデルにあった12時位置の「五星(スター)」マークが消え、「Chronometer Officially Certified(公式天文台認証)」の文字が配置されました。これは、この時計が「コレクションピース」であることを示す、熱烈なウォッチメイトへの敬意とも言えるでしょう。
4. 価格帯と購入価値
市場での立ち位置:
一般的な高級時計ブランドでは、フライバック機能が搭載されると価格は数十万円単位に跳ね上がります1。しかし、ロンジンはそれを約4万円という手の届く価格に封じ込めています。
総評:エントリーブランドを超えた「硬派」
今回の「先行者 フライバック 手巻きモデル」は、明らかに「コレクター」をターゲットにした一台です。
39.5mmという絶妙なサイズ、手巻きならではの操作感、そして100年の航空史を誇る浪琴のノウハウ。
もしあなたが「ただのスポーツウォッチではなく、歴史と技術を味わえる時計」を探しているなら、この時計は間違いなく「買い」です。